M&Aの秘密保持契約で押さえておきたい4つのポイント


M&Aにおいては、「秘密保持契約」は欠かせない契約のひとつとなります。M&Aに興味を示していること、企業の実情などが周囲に知れ渡ると、経営的に大きなダメージを受けかねないので、第三者も含めて情報を漏洩しないことは、最も重要な留意事項と言えるでしょう。では、秘密保持契約を結ぶ際には、どのようなポイントに注意するべきなのでしょうか?

ここでは、M&Aにおける秘密保持契約の概要や、注意するべき4つのポイントについてご紹介していきます。

■情報漏洩に対する認識を明確に

M&Aにおいて情報漏洩が生じると、具体的にどのような影響があるのでしょうか?具体的な影響としては、

  • 経営者がM&Aに興味を示していることが知れ渡り、従業員が動揺する
  • 企業の内情が知れ渡り、顧客や取引先に不信感を与える

などが挙げられるでしょう。これらの影響によって、経営面に大きなダメージが生じてしまう恐れがあるので、M&Aにおいて秘密保持契約は必須と言えます。

また、M&Aの秘密保持契約は、売り手側と買い手側のみが交わせば良いというわけではありません。実際のM&Aでは、ほかにもさまざまな第三者が関わる可能性があるので、全ての人が情報を漏洩しない状況をつくることが大切です。

M&Aに関わる第三者としては、

  • 弁護士や会計士、税理士などの専門家
  • 監査法人
  • M&Aアドバイザー
  • M&A仲介会社

などが挙げられるでしょう。売り手側だけでなく、買い手側にも周囲に漏らすべきではない情報は多くあるので、買い手側も積極的に秘密保持契約に動き出す必要があります。

では、以下で秘密保持契約のポイントを見ていきましょう。

■秘密保持契約のポイント

【ポイント1】契約の目的を明記しておく

M&Aにおける秘密保持契約の目的は、「M&Aに関する情報のみを公開し、情報漏洩しないこと」です。この部分が曖昧になっていると、自社の情報を公開した相手方の企業が、M&A以外のことに情報を利用するかもしれません。

したがって、秘密保持契約の契約書においては、必ず契約の目的を明記するようにしましょう。「M&Aのための書類であること」に加え、「ほかの用途に使用しないこと」を記載しておけば問題ありません。

【ポイント2】情報共有の範囲を明確にする

一般的なM&Aでは、買い手側は売り手側の情報をより多く収集することを目指します。これは買い手側としては当然であり、多くの情報を得ることによって、合併後のリスクを抑えられるためです。

しかし、多くの情報を開示するとなると、売り手側にはその分情報漏洩のリスクが圧しかかります。したがって、開示する情報を共有する「範囲」については、契約において明確にしておくことが大切です。

また、情報共有の範囲に合わせて、

  • 契約の対象となる情報の範囲
  • 情報の管理方法
  • 情報の伝達方法

なども定めておくことが望ましいでしょう。

【ポイント3】M&Aが成約しない可能性も踏まえる

秘密保持契約を締結したとしても、その後両社の間で交渉がスムーズに進まなければ、M&Aが成約しないことも考えられます。そうなると、売り手側・買い手側の双方は、提供した情報を返却してもらうことが望ましいでしょう。

仮に、提供した情報をそのままにしておくと、将来的にその情報を悪用されてしまう恐れもあります。例えば、事業内容や市場の特性が漏れてしまうことによって、その企業の利益が減ってしまうかもしれません。

したがって、秘密保持契約ではM&Aが成約しなかったことも踏まえて、文面を作成する必要があります。成約しなかった場合に、

  • 情報を返却、廃棄する
  • 第三者に開示しない

などの旨を、契約書に記載しておくことが望ましいでしょう。

【ポイント4】契約を違反した時も想定しておく

契約書を残したからといって、必ずしも相手方の企業が契約内容を守るとは限りません。違反をした場合に、どのような「罰則」があるのかを明記しておかなければ、契約を違反するリスクがなくなってしまいます。

したがって、秘密保持契約では相手方が契約を違反することも想定して、文面を作成するようにしましょう。具体的には、

  • 損害賠償に関する事項
  • 管轄

を記載しておく必要があります。

■秘密保持契約書のひな型

秘密保持契約の重要なポイントは上記となりますが、ポイントを押さえただけでは契約書を作成することは難しいでしょう。そのため、以下では秘密保持契約書のひな型をご紹介していきます。

○ひな型

秘密保持契約書

(相手方の企業)株式会社

代表取締役(相手方の企業の経営者)殿

当社は貴社に対し、以下の通り秘密保持を確約する。

第1条(確約の目的)

当社(以下「甲」という。)がM&A(以下「本件」という。)に関する情報を提供し、貴社(以下「乙」という。)が受領した場合には、これらの情報は、本件を進めるか否かを判断する目的のみに使用し、他の用途に使用しない。

第2条(情報の範囲)

本確約書の対象とする情報(以下「本件情報」という。)は、甲及び関係者から取得するM&Aに関する全ての情報とし、本件を検討したこと自体含むものとする。なお、取得した情報については、書面であると口頭であるとを問わない。

但し、以下のものは除く。

①開示された時点で、既に公知となっていた情報

②開示された後で、自らの責めに帰するべき事由によらず公知となっていた情報

③正当な権限を有する、第三者から開示された情報

④開示された時点で、既に乙が自ら適法に保有していた情報

第3条(情報共有の範囲)

本件情報は、甲の役員、従業員において、本件を検討するために必要最小限の者の間でのみ共有し、社内を含めその他の者、及び第三者に開示しない。

但し、弁護士、公認会計士、税理士等、本件を検討するために依頼した公的

資格ある者は除く。

第4条(情報の返却)

甲、又は乙が本件を成約しない旨を決定した場合、すみやかに関係資料を返却、又は廃棄する。関係資料の返却、廃棄の方法については、甲、又は乙の指示に従うものとする。

その後も本確約書に従って、本件情報を社内を含め第三者に開示しない。

第5条(損害賠償)

本確約書に違反した場合には、情報の受領者は開示者に対して、開示者に生じた損害を賠償しなければならない。

第6条(管轄)

本確約書に関する一切の訴訟は、日本法を適用するものとし、東京地方裁判所、又は東京簡易裁判所を管轄裁判所とすることに同意する。

以上確約し、本書面2通を作成し、甲乙記名押印の上、各自1通を保有する。

                              平成  年  月  日

                  住 所

                  氏 名

■おわりに

M&Aに関する情報は、売り手側・買い手側の双方にとって、秘密保持をするべき重要な情報と言えます。そのため、両社の間で納得できる契約を交わし、ともに情報漏洩の防止に努める必要があるでしょう。

また、ケースによって契約書に含める取り決めは異なるので、上記でご紹介したひな型を参考にしつつ、具体的なシーンを想定した上で契約書を作成することが大切です。

参考URL:

https://sogyotecho.jp/wp-content/uploads/2014/11/44cc381c105dcb85ec2bd2f5c4a157ce.pdf

http://www.kaneko-law-office.jp/image/manda/contract_01.pdf

秘密保持契約|M&A用語集|日本M&Aセンター:No1のM&A支援実績
https://www.nihon-ma.co.jp/glossary/006NonDisclosureAgreement.html

M&A・企業再生・民事再生|M&A関連契約書の検討|東京の弁護士 金子博人法律事務所
http://www.kaneko-law-office.jp/manda_10.html

秘密保持契約書(NDA:Non-Disclosure Agreement)とは |サービス:M&A|デロイト トーマツ グループ|Deloitte
http://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/mergers-and-acquisitions/articles/term-nda-20120229.html

買い手候補企業による秘密保持契約の締結|M&A手順|日本M&Aセンター:No1のM&A支援実績
https://www.nihon-ma.co.jp/service/procedure/p2-3nda.html

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