このデューデリジェンスは、主に6つの種類に分けることができ、どのデューデリジェンスを専門家に依頼するべきか、慎重に検討する必要があります。そこで今回は、デューデリジェンスに関する基礎知識や、各種類の概要などについてご紹介していきます。
デューデリジェンスとは、M&Aにおける対象企業の資産・事業などの価値を、適正に判断する調査のことを指します。デューデリジェンスを行う際には、公認会計士や弁護士などの専門家に依頼するケースが一般的です。基本的には、M&Aの実務を理解しており、デューデリジェンスの経験が豊富な専門家に依頼することが望ましいとされています。
M&Aにおける売却金額は、一般的に企業・事業の価値を示す「バリュエーション」と呼ばれる指標を基準として定められます。しかし、買い手側は売り手側の企業の内部を細かく確認できるわけではないので、売り手側がバリュエーションを算出したとしても、その値が適正かどうか判断できないケースもあります。そのため、お互いがより納得できる形を目指して、M&Aでは最終譲渡契約の前にデューデリジェンスを実施する場合が多くなっています。
実施する具体的なタイミングについては、基本合意契約の締結後、最終譲渡契約を締結する前までの段階が一般的です。買い手側が独占交渉権を得ていないと、他社の参入などのトラブルが生じる恐れがあるので、基本合意契約において独占交渉権を得てから、最終譲渡契約を結ぶまでの間に実施することが望ましいでしょう。
なお、デューデリジェンスを依頼する際にはコストがかかりますが、このコストは原則として買い手側が負担することになります。中小企業同士のM&Aを例に挙げると、デューデリジェンスのコストは最低でも50万円~300万円程度となるでしょう。
では、以下で6つのデューデリジェンスについて見ていきましょう。
ビジネスデューデリジェンスでは、対象企業の内部ではなく、外部要因にあたる「市場」を主に調査することになります。買い手側の企業が自身で実施するケースも見られますが、対象企業や市場が大規模な場合には、経営コンサルティングなどの専門家に依頼するケースが増えてきます。
ビジネスデューデリジェンスを実施する主な目的としては、
などが挙げられるでしょう。ビジネスデューデリジェンスを実施することで、買い手側の企業はその業界の特性やリスク要因を把握することができ、対象企業の事業の適性価値を見極めやすくなります。
財務デューデリジェンスでは、対象企業が作成した「財務諸表」が適正かどうかを調査します。具体的には、資産の価値や不良債権の有無、簿外債務、負債など、対象企業の財務状況を細かく調査することによって、買収におけるリスクを軽減させることができます。
財務デューデリジェンスを実施する主な目的としては、
などが挙げられます。M&Aの買い手側は、売り手側の財務状況をしっかりと把握しておかないと、引き継ぎたくない資産なども全て引き継いでしまう恐れがあるので、そのリスク対策として財務デューデリジェンスが実施されています。
法務デューデリジェンスでは、対象企業の契約や取引行為の内容を調査します。具体的には、
などが調査されています。
対象企業の契約や取引行為が違法にあたると、買収後にその部分が大きなリスクになってしまう恐れがあります。法的なリスクは解消することが難しい問題となるので、対象企業の事業内容によっては法務デューデリジェンスは必要不可欠と言えるでしょう。
人事デューデリジェンスでは、対象企業の人事や労務を調査します。具体的には、従業員の就業条件や人事制度を分析することによって、組織再編後の環境を整えていきます。
人事デューデリジェンスを実施する主な目的としては、
などが挙げられるでしょう。人事デューデリジェンスでは、調査結果と実態が大きく異なるケースも見られるので、実施方法や依頼する専門家を慎重に選ぶことが重要となります。
税務デューデリジェンスでは、対象企業の課税関係を分析していきます。具体的には、
上記のような調査を行うことで、買い手側は税務リスクを抑えることができます。
また、繰越欠損金について分析するので、買い手側はM&A後の欠損金を予測することができ、将来の計画を立てやすくなるといったメリットもあります。税務デューデリジェンスは重要度が低いと認識されることもありますが、売り手側の状況によっては「重加算税」が生じてしまう恐れもあるので、M&A後の経済的損失を避けるための重要な手段と言えるでしょう。
ITデューデリジェンスでは、管理システムの統合手段、M&A後のIT化への可能性などを調査します。現代は「IT社会」と称されることもありますが、特に管理システムや業務処理システムなどにおいてIT技術を多く導入している場合には、M&Aをきっかけに予期せぬトラブルが生じかねません。企業全体の業務が停滞する恐れもあるので、ITデューデリジェンスはそのようなリスクを回避する手段となります。
また、M&A後に新たにIT技術を導入する場合には、業務内容とシステム関係の両方に詳しい専門家に依頼しなければ、業務の効率化は難しくなります。IT化の方法によっては、以前より業務内容が複雑になってしまう恐れもあるので、慎重に計画を進める必要があるでしょう。
このように、デューデリジェンスには主に6つの種類があり、種類ごとに目的や調査内容が異なります。当然、デューデリジェンスを実施するにもコストがかかるので、まずはどのデューデリジェンスの優先度が高いのかを慎重に判断する必要があるでしょう。
事業内容や業界、対象企業の規模などによって、買い手側の企業がこれから直面するリスクの内容は変わってきます。どのようなリスクが大きく、どのリスクから回避するべきなのかを判断した上で、実施するデューデリジェンスの種類や依頼先などを検討することが大切です。
デューデリジェンスを実施すると、M&A後のリスク対策、業務や事業の効率化などを実現することができます。しかし、専門家に全てを任せておけば、必ずしも良い調査結果になるというわけではありません。
デューデリジェンスを依頼する場合はコストがかかるので、どのような調査・分析が必要になるのかを慎重に判断した上で、今後の計画を立てることが望ましいでしょう。
デューデリジェンス(でゅーでりじぇんす)とは - コトバンク
https://kotobank.jp/word/%E3%83%87%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%82%B9-6430
ビジネスDD|M&A用語集|日本M&Aセンター:No1のM&A支援実績
https://www.nihon-ma.co.jp/glossary/037BusinessDD.html
財務デューデリジェンス(ざいむでゅーでりじぇんす)とは - コトバンク
https://kotobank.jp/word/%E8%B2%A1%E5%8B%99%E3%83%87%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%82%B9-1465423
M&Aの法務デューデリジェンス 大まかな進め方と費用のかけ方について 大塚・川﨑法律事務所 | 鬼の法務部
http://onihou.com/post/201310/181
人事デューデリジェンス | 人事コンサルティング クレイア・コンサルティング株式会社
http://www.creia.jp/service/s-ma/1096/
財務・税務デューデリジェンス(バイサイド)|サービス:M&A|デロイト トーマツ グループ|Deloitte
http://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/mergers-and-acquisitions/solutions/duediligence.html
ITデューデリジェンス/ディール後のIT統合サービス(PMI) | PwCコンサルティング合同会社
http://www.pwc.com/jp/ja/advisory/services-consulting/technology/it-deal-support.html
【デューデリジェンスの基礎】企業の資産価値を測る6種のデューデリジェンスを解説
https://biz.moneyforward.com/blog/houjin-kaikei/about-due-diligence/
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