M&Aによって事業承継を行うには、いくつかのステップを踏む必要があります。M&Aの契約締結までは、売り手側・買い手側ともにさまざまな準備をこなしておく必要があるので、検討中の方はM&Aの流れをある程度把握しておくことが大切になるでしょう。
そこで今回は、M&Aの一般的な流れを分かりやすくご紹介していきます。
まずは具体的に説明する前に、以下でM&Aの全体の流れをご紹介していきます。
【1】売り手・買い手による個別相談(双方)
【2】売り手とM&Aアドバイザーとの契約(売り手側)
【3】提案資料の作成(売り手側)
【4】ネームクリアの確認(売り手側)
【5】買い手とM&Aアドバイザーとの契約(買い手側)
【6】ノンネームシートでの提案(買い手側)
【7】買い手による検討(買い手側)
【8】トップ面談の実施(双方)
【9】「意向表明書」の提示(双方)
【10】「基本合意契約書」の締結(双方)
【11】デューデリジェンスの実施(買い手側)
【12】「最終譲渡契約書」の締結(双方)
【13】クロージング(双方)
(★ここは図表にした方が良いかもしれないです)
M&Aは基本的に、上記の流れで準備が進められていきます。ただし、売り手側・買い手側の都合次第では、多少流れが異なるケースも見られます。特に、【9】の意向表明書、【10】の基本合意契約書については実施されない場合もあるので、必ずしも上記の流れになるわけではないという点を理解しておきましょう。
では、各ステップの詳細について、以下で具体的に説明していきます。
M&Aを検討している売り手側・買い手側の企業は、まずはM&Aアドバイザーなどに個別相談を行います。個別相談の内容としては、
などが挙げられるでしょう。より具体的なアドバイスを受けるために、決算書や企業の概要書などを持ち込み、個別相談を受ける企業も見られます。
M&Aの方向性が固まったら、売り手側はM&Aアドバイザーとの契約へと進みます。売り手側の企業とM&Aアドバイザーが個別に話し合い、今後の方向性や報酬などの面で折り合いがつくと、
両者は上記2つの契約を締結することになります。
機密保持契約を結ぶことで売り手側の機密は守られ、ファイナンシャルアドバイザリー契約によってアドバイザーの業務範囲や報酬などが明確に決められます。
提案資料とは、買い手側の企業にM&Aの条件を提示するための資料のことを指します。基本的には、契約をしたM&Aアドバイザーが面談内容などを基に、提案資料を作成することになります。ただし、より具体的な内容にするため、売り手側は
などの資料を用意する必要があるでしょう。
売り手側の企業には、M&Aの準備がある程度進むまで、会社名などの情報を明かさない企業も存在しています。そのような企業の情報を簡潔にまとめた書類を「ノンネームシート(一枚もの、ノンベースなどとも呼ばれる)」と言いますが、この状態では買い手側の企業に買収を検討してもらうことができません。
そのような場合に、買い手側の企業に対して会社名・重要な資料などを公開することを「ネームクリア」と言います。売り手側の企業は、この段階で公開するべき情報・するべきでない情報を明確にしておかないと、さまざまなリスクが生じてしまう恐れがあります。
具体的なリスクとしては、
などが挙げられるでしょう。
ここまで進んだら、次は買い手側が準備を進めていきます。買い手側の企業とM&Aアドバイザーとの契約も、基本的には【2】と流れは変わりません。両者で話し合いを行い、
上記2つの契約を締結します。
M&Aアドバイザーは、売り手側の企業情報をノンネームシートによって買い手側に伝え、M&Aを提案します。ただし、M&Aアドバイザーは闇雲にノンネームシートを選定するわけではなく、買い手側の希望に応じた企業の情報を優先的に伝えます。
買い手側がある企業のノンネームシートに興味を示したら、さらに具体的な情報を公開できるように、M&Aアドバイザーが行動していきます。売り手側のM&Aアドバイザーに対してネームクリアの確認を行い、確認が取れたら会社名や財務状況など、売り手側の重要情報を買い手側へと伝えます。
この情報を基に、買い手側の企業はM&Aの検討を進めていきます。
ネームクリアによって公開された情報を把握しただけでは、M&Aの契約を結ぶにはリスクが高いと言えます。そのため、売り手側・買い手側の双方がM&Aに興味を示したら、両社の経営者によるトップ面談が実施されます。
面談の内容はケースによって異なりますが、具体例としては
などが挙げられるでしょう。
意向表明書とは、M&Aにおける
などの情報が記載されている書類のことです。トップ面談がスムーズに進んだら、買い手側はこの意向表明書をM&Aアドバイザーとともに作成し、売り手側へ条件を提示します。
M&Aの条件面については、基本的に両社のM&Aアドバイザーが話し合いを行い、詳細を決めていく流れとなります。
売り手側が意向表明書に合意したら、いよいよ契約書の作成へと移ります。基本合意契約書には、
などの情報が記載されます。
両社がその内容に合意したら、基本合意契約を締結することになります。
デューデリジェンス(DD)とは、買い手側から依頼を受けた専門家(公認会計士・弁護士など)が、売り手側の企業に対して実施する調査のことです。専門家は財務調査や法務調査などを行い、売り手側の企業に存在するリスクを明確にし、そのリスクへの対策などを考案します。
当然ですが、依頼をする専門家によってデューデリジェンスの結果は異なるので、買い手側の企業はM&Aの実務を理解しており、経験が豊富な専門家に依頼することが望ましいとされています。また、デューデリジェンスの費用は基本的に買い手側が負担することになりますが、依頼先によって費用も異なるでしょう(中小企業同士のM&Aで、最低50万円~300万円は必要となる)。
なお、基本合意契約において独占交渉権を得ていない段階でデューデリジェンスを実施すると、買い手側はコストを負担したのにも関わらず、売り手側の企業を他社に買収されるといった状況に直面してしまう恐れがあります。そのため、デューデリジェンスの時期については、独占交渉権を得てからが望ましいとされています。
デューデリジェンスの結果も含め、ここまでの取り決めに売り手側・買い手側の双方が合意すると、最終譲渡契約書の締結へと進みます。ただし、企業によっては
における承認が必要になるケースもあるので、売り手側・買い手側は自社内の準備も進めておく必要があるでしょう。
また、M&Aの方法によって契約書の名称が異なるので、その点にも注意しておく必要があります。例えば、株式譲渡によるM&Aの場合は、「株式譲渡契約書」が最終譲渡契約書となります。
最終譲渡契約書の締結が済むと、M&Aは基本的に完了となります。ただし、ケースによっては、最終譲渡契約書の締結後にも諸手続きが発生することがあります。
諸手続きの具体的な内容としては、
などが挙げられるでしょう。これらの諸手続きを全て完了させることを、「クロージング」と言います。
最終譲渡契約書の締結からクロージングまでは、一定期間を設けるケースが一般的とされていますが、契約と同時にクロージングを完了させるケースも見られます。クロージングまでの期間については、両社の間で話し合うことになるでしょう。
M&Aにかかる期間(上記【2】~【13】まで)は、一般的に3ヶ月~12ヶ月のケースが多いとされています。両社の準備に多くの時間がかかると、当初に算出したバリュエーションと、契約時点でのバリュエーションに大きな違いが生じる可能性もあるので、期間が長引くことは両社にとって望ましくないでしょう。
そのため、M&Aを検討している企業は、あらかじめM&Aの流れをよく理解しておき、スムーズに行動できる状況をつくっておくことが大切です。上記の流れを参考にしながら、まずはどのような準備を進めるべきなのか慎重に判断していきましょう。
M&Aを検討し始めてからクロージングを完了させるには、多くのステップを踏む必要があります。ケースによっては順序が多少前後する可能性もありますが、基本的には今回ご紹介した順序となるので、上記の流れを参考にしながらスムーズに準備を進めていきましょう。
M&A個別相談|M&A手順|日本M&Aセンター:No1のM&A支援実績
https://www.nihon-ma.co.jp/service/procedure/p1-1counsel.html
ノンネーム|M&A用語集|日本M&Aセンター:No1のM&A支援実績
https://www.nihon-ma.co.jp/glossary/010NonNameSheets.html
ネームクリア|M&A用語集|日本M&Aセンター:No1のM&A支援実績
https://www.nihon-ma.co.jp/glossary/011NameClear.html
買収までの流れ・手順/日本M&Aアドバイザー協会
http://www.jma-a.org/buy/flow
最終契約書(Purchase Agreement)
http://ma.mgrp.jp/dictionary/105
M&Aにかかせない「ノンネームシート」の読み方 - INSIGHT NOW!プロフェッショナル
http://www.insightnow.jp/article/4108
メニューを閉じる