株式譲渡の場合のバリュエーション・企業評価の決め方完全ガイド


企業のバリュエーション(企業評価)は、M&Aの売却価格を決める際に参考とされる重要な情報です。中小企業のM&Aにおいては、株式譲渡によって経営権を移転させる方法が主流となっていますが、この株式譲渡ではどのようにバリュエーションが決められているのでしょうか?

ここでは、株式譲渡の場合のバリュエーションの決め方についてご紹介していきます。

■株式譲渡の場合のバリュエーション

株式譲渡における企業のバリュエーションは、一般的に下記の式によって導き出されています。

株主価値=時価純資産額+(実質経常利益×3)

上記の式の「時価純資産額」とは、企業が所有している資産を時価評価し、その資産から負債(時価評価)を除いた額のことを指します。一般的な企業の決算書には「純資産額」が記載されていますが、この純資産額を時価評価したものが時価純資産額となります。

また、実質経常利益とは、企業の経費を適性値に戻し、実質経常利益に足し戻した利益のことを指します。企業の経費としては、主に

  • 事業とは関係のない経費
  • オーナーの個人経費
  • 節税対策のための役員報酬や保険料

などが含まれます。

なお、ケースによっては実質経常利益ではなく、実質営業利益が使用されることもあります。

■時価純資産額の算定方法

前述で軽く触れましたが、以下では時価純資産額の算定方法について、具体的に説明していきましょう。時価純資産額を算出する際には、企業の負債を明確にする必要がありますが、負債としては主に

  • 不動産の含み損益
  • 保険積立金の含み損益
  • 従業員の給与の未払い分
  • 賞与引当金
  • 退職給付引当金
  • 税効果会計による調整分

などが含まれます。なお、純資産額や負債に関しては、全て決算書の内容を簿価から時価へ修正する必要があります。

決算書を時価へ修正したら、後は以下の式に当てはめるだけで、時価純資産額を算出することができます。

時価純資産額=純資産額-負債の合計

純資産額が1億円、負債の合計が2,000万円であるA社を例に挙げると、

1億円-2,000万円=8,000万円

上記の式によってA社の時価純資産額が8,000万円であることが分かります。

■実質経常利益の算出方法

実質経常利益を算出するには、まず経常利益を明確にしなければなりません。では、この経常利益については、どのような算出方法で導き出せば良いのでしょうか?

一般的なケースでは、経常利益は以下の式によって算出されています。

経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用

上記の式の「営業外収益」とは、営業活動以外の活動によって得られる収益のことを指します。具体的なものとしては、

  • 有価証券の利息
  • 有価証券の売却額
  • 不動産の賃貸料

などが挙げられるでしょう。

また、「営業外費用」については、本業以外で発生する費用のことを指します。具体的なものとしては、

  • 支払の利息
  • 社債の利息
  • 有価証券の売却損

などが挙げられます。営業外収益と営業外費用を把握したら、まずは上記の式に当てはめて経常利益を算出してみましょう。

例えば、営業利益が2,000万円、営業外収益が1000万円、営業外費用が500万円のA社を例に挙げると、経常利益は以下のように計算されます。

2,000万円+1,000万円-500万円=2,500万円

経常利益を算出したら、後は以下の式に当てはめれば実質経常利益を算出することができます。

実質経常利益=経常利益+節税対策額

■バリュエーション算出の具体例

以下では、時価純資産額8,000万円、経常利益2,500万円、節税対策額が500万円のA社を例に挙げて、具体的な算出方法をご紹介していきましょう。

8,000万円+(2,500万円+500万円)×3=1.7億円

上記の式から、A社のバリュエーションは1.7億円であることが分かります。ただし、実際のM&Aではバリュエーションはあくまでも参考情報であり、必ずしも売却金額と一致するわけではありません。基本的にM&Aでは、双方の合意額が売却金額となるので、場合によってはバリュエーションと売却金額の間に大きな差が生じることもあります。

また、バリュエーションは簿価ではなく時価での計算となるので、売り手側が算出したバリュエーションと、買い手側が算出したバリュエーションの間に差が生じるケースも少なくありません。そのため、上記の式によって算出したバリュエーションは、売却金額の目標としてではなく、あくまでも売却金額を決めるひとつの目安として捉えると良いでしょう。

■おわりに

今回は、株式譲渡の場合のバリュエーションの決め方をご紹介してきました。

バリュエーションの算出方法は、株式譲渡や事業譲渡などM&Aの手法によって異なることがあります。間違った算出方法を使用すると、自社の適性な価値を見極めることは難しくなるでしょう。

そのため、株式譲渡によるM&Aを検討している方は、基本的に今回ご紹介した式を使用して、自社のバリュエーションを算出するようにしましょう。

参考URL:

算定方式 | 信金キャピタル株式会社
http://www.shinkin-vc.co.jp/business/ma/ma_jyoto/santei/579

時価純資産を算出する | 信金キャピタル株式会社
http://www.shinkin-vc.co.jp/category/business/ma/ma_jyoto/jika

税効果会計について簡単にやさしく解説(会計仕訳・税務調整等)
http://zeikouka.net/

バリュエーションの方法 | バリュエーションならCapital Evolver
http://capitalevolver.com/study/valuation_trade.html

時価純資産|M&A用語集|日本M&Aセンター:No1のM&A支援実績
https://www.nihon-ma.co.jp/glossary/019NetAssetValue.html

営業外費用|会計用語集|会計ソフト「MFクラウド会計」
https://kotobank.jp/word/%E5%96%B6%E6%A5%AD%E5%A4%96%E5%8F%8E%E7%9B%8A-35840

営業外収益(えいぎょうがいしゅうえき)とは - コトバンク
https://biz.moneyforward.com/words/eigyogaihiyou/

経常利益
http://financial.mook.to/accounting/02/kg/kg-k25.htm

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