近年では、中小企業から大企業までさまざまな企業がM&Aを行っていますが、大企業と中小企業のM&Aには異なる傾向が見られます。では、具体的にどのような部分が異なっているのでしょうか?
ここでは、大企業と中小企業のM&Aの違いについてご紹介していきます。
まずは、現在の日本の実情についてご紹介していきましょう。
日本国内には、全国の信用中央金庫270社の出資によって経営されている、「信金キャピタル㈱」というM&Aの仲介企業があります。信金キャピタル㈱は信用中央金庫の全額出資子会社にあたるため、全国の信用中央金庫をネットワークとして、さまざまな地域の中小企業に関する情報収集を行っています。
この信金キャピタル㈱は、現状としては月に10件程度のM&Aの相談を受けており、全国の信用中央金庫270社のうち、170社を5名でカバーしています。日本には中小企業が400万社以上(個人事業主を含む)存在していることを踏まえると、国内のM&Aの規模は決して大きくないと言えるでしょう。
M&Aの規模が大きくない要因としては、中小企業の「認知度不足」が挙げられます。M&Aは廃業に比べるとさまざまなメリットを得られる手段ですが、国内ではさまざまな地域において認知度が低いために、M&Aを検討する中小企業が少ない傾向にあります。
そのため、大企業と中小企業のM&Aには、その背景や方法にいくつかの違いが見られます。では、具体的にどのような違いがあるのかについて、以下で見ていきましょう。
中小企業のM&Aの規模については、上記の信金キャピタル㈱の例で解説した通り、規模が大きいとは言えません。それに対して、大企業のM&Aの規模については、近年では年間に2,500~3,000件ほど行われています。日本国内に存在する大企業が約12,000社であることを踏まえると、中小企業のM&Aに比べて規模が大きいことが分かるでしょう。
中小企業は後継者不在に悩まされやすい傾向があり、後継者不在によって廃業する中小企業は、年間に約7万社存在しています。近年では、中小企業の廃業率は約5%とされており、年間で20万社前後の中小企業が廃業に追い込まれています。
そのため、中小企業は後継者不在を解消する手段としてM&Aを利用するケースが多い傾向にあります。また、厳しい経営環境にある中小企業では、現在行っている事業の将来性を懸念して、M&Aを行うといったケースも少なくありません。
それに対して、大企業のM&Aの主な目的は、市場規模の拡大や破綻企業の再生、国際競争力の向上などとされています。つまり、中小企業は後継者不在などのマイナス要因を解消するためにM&Aを行いますが、大企業は市場拡大など挑戦的な姿勢でM&Aを行っている実情が伺えます。
大企業のM&Aのほとんどは、都市部に集中しています。都市部は市場規模が大きいですし、多くの大企業が都市部に本社・支社を構えている現状を踏まえると、この結果は当然と言えるでしょう。
それに対して、後継者不在や事業の将来性に悩まされている中小企業は地方に多く存在しているので、中小企業のM&Aは都市部に集中しているわけではありません。
中小企業にとってM&Aは、さまざまな問題点を解消する手段となり得ます。具体的には、
などの問題点を解消できる可能性があるでしょう。しかし、その反面で、現状は廃業に追い込まれている中小企業が多い傾向にあります。
その要因としては、まず中小企業の「体質」が挙げられるでしょう。現在では、実に約9割の中小企業が創業者一族によるオーナー経営となっており、親族以外に事業承継をするケースが極端に少ない傾向にあります。親族への事業承継には資産を築けるなどのメリットもありますが、一族経営にこだわっている中小企業は後継者不在に悩まされやすいでしょう。
M&Aが成立すれば、売り手側は事業に見合ったキャピタルゲインを受け取ることができ、事業・資産・人をスムーズに承継させることができます。一族経営よりM&Aのほうがメリットが大きいケースも見られるので、一族経営にこだわらず、中小企業の経営者は広い視野を持つことが重要になるでしょう。
また、地方には⼩規模案件の「アドバイザー」が不足している傾向があり、その点も中小企業の問題点となり得ます。例えば、M&Aによって大きな利益を得られる中小企業があったとしても、M&Aを推奨するアドバイザーが存在しなければ、M&Aについての理解を深める機会を得られない可能性があります。
したがって、特に地方の中小企業の経営者は、自発的にM&Aについて理解を深めることが大切になります。後継者不在などの問題に直面した場合には、廃業とM&Aのメリット・デメリットをしっかりと比較できるように努めることが、スムーズに問題を解消する方法となるでしょう。
現在の日本では、M&Aの認知度は全国的に高いとは言えません。特に、地方の中小企業においては、M&Aのメリットを知らないまま、廃業という道を選択する経営者もいることでしょう。
廃業にももちろんメリットはありますが、M&Aを選んだほうが大きなメリットを得られるケースも多く見られるので、M&Aについての理解を自発的に深めることが大切です。
信金キャピタル - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%A1%E9%87%91%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%94%E3%82%BF%E3%83%AB
最近の中小企業の景況について
http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/chushoKigyouZentai9wari.pdf
M&A - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/M%26A
M&A コンサルティング:スターシップホールディングス[アフターM&A |相続・事業承継|企業再生|MBO|資金調達]
http://www.starship-hd.co.jp/service/index4.html
メニューを閉じる