新規事業のスタートは、会社の今後を左右するほどの大きな決断です。その決断をより良い結果へと結びつけるために、M&Aの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
M&Aでスタートする新規事業には、ゼロから立ち上げる新規事業では得られないさまざまなメリットがあります。ここでは、新規事業にM&Aが向いている理由についてご説明します。
M&Aを活用することで、ゼロからの開業に比べて負担の少ない開業を行うことができます。そのため、M&Aでスタートした開業であれば、廃業に追い込まれるリスクを大きく下げられる可能性があります。
M&Aの盛んなアメリカでは、M&Aが廃業率に与える効果が明確に示されています。アメリカの事業は、開業後5年以内に80%以上が廃業すると言われており、新規事業を成功させることは決して容易なことではありません。しかし、既存事業の買収により開業した場合には、同じ5年以内に廃業する割合が15%に抑えられており、M&Aによる廃業率の低下をはっきりと見ることができます。
アメリカの例にならい、日本でもM&Aが今まで以上に活用されるようになれば、開廃業率の改善が期待できるでしょう。
例えば、日本で廃業率の高い業種として飲食店が挙げられます。飲食店は、1年間に5万店が開業しますが、その一方で、開業数を上回る6万店もの飲食店が廃業しているという厳しい現実があります。
しかし、M&Aを活用すれば、生き残りの難しい飲食店経営であっても経営の失敗を減らすことが可能です。通常の開業であれば、設備費や内外装費などに多額の資金を投入する必要がありますが、その資金を既存事業の買収に当てることで、良い店舗を安く手に入れ、廃業リスクを抑えた経営を始めることができるのです。
M&Aによって新規事業をスタートすれば、会社は短時間で規模の拡大を実現できます。
通常であれば、企業規模の拡大は一朝一夕に実現できるものではありません。新規事業を始めさえすれば、単純にその分が拡大するように思われますが、新規事業をゼロから立ち上げる場合にはさまざまなリスクがつきまとうため、既存事業が共倒れして、かえって規模が縮小する可能性もあるのです。
しかし、M&Aで始める新規事業であれば、そのリスクを大幅に抑えられます。そのため、新規事業のスタートが規模の拡大へと直結しやすい傾向にあります。
企業は規模の拡大をすることによって、「スケールメリット」を得ることができます。
「スケールメリット」とは、生産規模や生産量を高めることで、単位あたりのコストを抑えられるという効果です。規模を拡大しても固定費が大きく変わることのない事業では、より効率的に労働力、設備、生産方法を利用できる分、コストカットを実現することができるのです。
企業は、そのスケールメリットで得られる利益を市場に還元することで、さらなる成長へとつなげます。このように、規模を拡大することは企業成長の加速に貢献します。
M&Aは、新規事業の市場参入をスムーズにする効果があります。M&Aを利用しない参入では、「参入障壁」によって妨害され、困難を極めるケースも数多くあります。
市場で実績のある既存企業は、すでに技術力やブランド力、スケールメリットなどを備えており、それがアドバンテージとなります。そのため、参入企業は既存企業と互角に戦うことさえ難しく、そのような妨げが「参入障壁」と呼ばれているのです。
参入障壁に守られた既存企業に対し、正攻法で勝負を挑むことは大きなリスクを伴います。それよりも、参入したい市場で実績を挙げている企業を買収する方が賢明と言えるでしょう。
新規市場への参入に成功すれば、企業としての強みを持つことができます。
M&Aによれば、売主企業が多大なコストと時間をかけて築き上げた参入障壁さえも、即座に手に入れられます。本来であれば、参入を妨害される立場であるはずの企業が、参入障壁を味方につけて、後続企業の参入から守られる側へと立場を変えることができるのです。
参入の難易度は市場によって異なりますが、難易度が低い市場は競争が激しく、難易度の高い市場は利益を確保しやすい傾向があります。そのため、難易度の高い市場でこそM&Aのメリットが活かされ、参入を果たすことができれば、安定した事業へと結びつく可能性が高まります。
また、新規参入を可能にするM&Aは、事業の多角化を促進します。多角化が進むほど、企業はリスクを分散することができ、時代の変化や取り巻く環境に影響されにくい企業へと成長することができます。
M&Aを活用すれば、売主企業が持っている素晴らしい経営資源を獲得することができます。
例えば、事業に不可欠な人材、技術、営業基盤などがこの経営資源に当たります。これらは、ゼロから事業を立ち上げた場合には、多大なエネルギーを注いで確保しなければならないものですが、M&Aの場合には売主企業の資源をそのまま承継できます。中には、再現できないものが含まれている場合もあり、それを自社だけで独占することも可能です。
また、業種によっては、特許や許認可などが必要な場合もあります。これらがなくては、事業を営むことさえ許されないケースも多いですが、M&Aであれば売主企業の既得権を承継することで確保できます。
このように、M&Aは自社に不足する経営資源を一気に補ってくれます。売主企業が時間をかけて培ってきた貴重な経営資源は、他社との競争に勝つための武器として効果を発揮してくれるでしょう。
M&Aによって、事業の立ち上げや成長にかかる時間を大幅に短縮することができます。「M&Aは時間を買うこと」とたびたび表現されるほどであり、M&Aがもたらすメリットの中でも、時間短縮の効果は最大級のものと言えます。
一般的に、ゼロから新規事業を立ち上げた場合、経営を軌道に乗せ、一定の規模にまで成長させるには数年から数十年の長い月日を要します。しかし、M&Aであれば、売主企業が保有する事業所などの不動産、設備や商品などの動産、さらには、構築された組織と育成された人材、開拓された取引先などをそのまま取り込むことができるため、大幅な時間カットが可能です。
ビジネスにとって「時間」は非常に重要な要素です。いくら優れた事業であっても、参入のタイミングが遅れてしまうと、成功が遠ざかってしまうこともあります。そのため、M&Aの活用によって事業の立ち上げにかかる時間を最小限に抑えることは、タイミングを逃さず成功を引き寄せるための手段として非常に効果的です。
M&Aには、事業の「シナジー効果(相乗効果)」が生まれるというメリットもあります。M&Aによって新規事業をスタートすれば、組み合わされた企業同士が相互に作用し合うことで、それらの企業を単純に足し合わせた以上の経済的な価値を得られます。つまり、1+1が2以上の結果として返ってくるということです。
シナジー効果の主なものとしては、統合された企業間において、お互いに不足している部分をカバーし合うことで発揮されるプラスアルファの力、お互いに重なり合う部分をまとめることで実現するコストカットなどが挙げられます。
シナジー効果は、M&Aの醍醐味のひとつです。売主企業と買主企業との組み合わせによって、その効果は大きくも小さくもなりますが、どれほどのシナジー効果が得られるかという点では未知数な部分が大きく、正確な予測は容易ではありません。
そのため、シナジー効果の分析とそれに基づいた契約条件は、M&Aの成功を左右するほどの重要なポイントとなります。特に、売主企業は未知数のシナジー効果を過大評価して、買収価格に上乗せしようとする傾向がありますが、それを鵜呑みにすることは危険です。
シナジー効果で損をしないためには、売主企業の実態を深く理解しなければいけません。同時に、自社についても改めて分析し、熟知することが求められます。買主企業しか知らない自社の情報もあるため、売主企業の予測を超えるシナジー効果が見込めるならば、買収価格を抑えてコストパフォーマンスの高いM&Aを実現することが可能です。
M&Aは、営業エリアを容易に拡大することができます。自社とは異なるエリアに販売網を持つ企業を買収することで、既に出来上がっている販売網を活用できるためです。
売主企業の同業同士でのM&Aであれば、それぞれの販売網を足し合わせた範囲に営業エリアが広がるという効果にとどまりますが、新規事業をスタートするという場合は、異業種間でのM&Aであるため、以下に述べるように、さらなる営業力の強化が期待されます。
新規事業をM&Aでスタートすれば、「クロスセル」を実現することが可能となります。買主企業の既存事業Aの商品と売主企業の事業Bの商品をお互いの販売網にも乗せ、全ての取引先に対してAとBの2商品を提案します。
これによって、取引先の合計数は変わらなくても、売上総額を大幅に伸ばすことができます。
一般的に、新規に取引先を開拓するためには、相当のコストを費やす必要があります。しかし、M&Aによって実現する「クロスセル」であれば、新規開拓と比べて圧倒的にコストを抑え、効率的に売上を向上させることが可能です。
M&Aには、経営予測を立てやすいというメリットがあります。
売主企業の決算書などを通して売上や利益、経費を把握することができるため、M&Aに投資した資金をどれくらいの期間で回収できるのかを分析し、リスクを抑えた経営を始めることができます。
確度の高い予測は、経営をする上で大きな強みとなります。逆に言えば、「将来の不確実性」は開業する上での大きなリスクとなり得ます。多くの企業は、開業したての頃に「不確実」というリスクを抱え、トライ・アンド・エラーを繰り返しながら、予測の確度を高めていきます。
トライ・アンド・エラーを繰り返す中では、無駄なコストを負担しなければならない事態にも直面するものです。しかし、M&Aであればその過程を省くことができるため、開業当初から、信頼できる予測に基づいた効率的な経営を実現できます。
新規事業のスタートを含め、規模の拡大にもM&Aを駆使することによって、業界でNo.1の地位を獲得し、イニシアティブを握ることも夢ではなくなります。
多くの企業がひしめき合う業界の中で、内部成長によってNo.1の座を勝ち取ることは難易度の高いことです。しかし、No.2以下の会社同士が統合することで、業界No.1企業が誕生したという例は少なくありません。
No.1企業には、No.2以下の企業では得ることのできないメリットがあります。
例えば、「同質化戦略」が実行できる点です。「同質化戦略」とは、No.2以下の企業が新商品を開発して差別化を図ろうとした時、No.1企業がその商品を模倣することで、差別化を無効にすると同時に利益を得るという戦略です。
No.1企業は、No.2以下の先発品で需要を確認してからの後追いであるため、低コスト、低リスクで市場を拡大することができます。これはNo.1ならではの企業力によって実現できることであり、No.1企業は新たな需要が開発される度に最も利益を得られます。
M&Aには、新規事業を成功へと導くさまざまなメリットがありますが、それを経営に活かせるかどうかは、買主企業経営者の手腕にかかっています。M&Aが持つそれぞれのメリットを最大限に引き出し、新規事業を飛躍的な成長へと結びつけましょう。
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売上予測が重要-ティ・スクエア株式会社
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クロスセルとは-synergyMarketing
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マーケットリーダーのメリット-■連載:金融サービスのマーケティング
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No.1のメリット-すぽさん投資ぶろぐ
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同質化戦略-ビジネス戦略com
http://begirama2.net/archives/97
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http://keieimanga.net/archives/7439509.html
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