日本国内に限っても、M&Aをする企業の数は少なくありません。では、国内では具体的にどれぐらいの企業が、M&Aをしているのでしょうか?
ここでは、日本国内のM&A件数や金額についてご紹介していきます。
日本国内同士のM&Aの件数(IN-IN)を見てみると、1990年代後半から件数が急速に増え始め、2005年には2,000件を超えていることが分かります。その後は減少気味にありますが、1980年代に比べるとM&Aは国内にも浸透していると言えるでしょう。
また、国内から海外(IN-OUT)の件数については、1980年頃から2015年にかけて大きな違いは見られません。海外から国内(OUT-IN)の件数についても、若干ながら増加傾向は見られるものの、1980年代に比べて件数が劇的に増加したとは言えないでしょう。
このような結果から、日本のM&Aは国内同士の企業で行う方向性が主流であることが分かります。
では、M&Aの件数ではなく、金額についてはどうでしょうか?上記のグラフを見てみると、日本国内同士(IN-IN)のM&Aについては、1990年代後半から急激に金額が増加したと言えます。
国内から海外(IN-OUT)、海外から国内(OUT-IN)についても同様であり、いずれも1990年代中盤までと比べると、M&Aの金額は増加傾向にあります。このような結果から、近年では全体的にM&Aに費やす金額が増えていると言えるでしょう。
上記2つのグラフを比較してみると、国内企業から海外企業へのM&A(IN-OUT)に関して、件数に比べて金額が多いことが分かります。これはつまり、海外企業を買収する際に費やすコストが、全体的に増えてきていることを意味しています。
では、なぜこのような現象が生じているのでしょうか?その背景のひとつには、国内の「少子化」があるとされています。少子化が進むと国内の内需は縮小するので、その縮小を補うために国内企業は海外市場に目を向けるようになります。
また、海外市場の特性は国内市場とは異なるため、海外進出をして新たに事業を立ち上げるより、すでに体制が整っている海外企業を買収するほうが、スムーズに事業を進めやすくなります。
したがって、国内企業は海外企業へのM&Aに積極的な姿勢を見せており、それにかけるコストも急増していると考えられます。
M&Aに積極的な姿勢を見せているのは、日本国内だけではありません。特に、経済成長が著しいアセアン諸国(アジア新興国)では、多くの企業がM&Aに関係しています。
もちろん、日本国内の中にも、アセアン諸国に注目している企業は多いでしょう。今後、海外企業へのM&Aについては、その対象が新興国へシフトするとされており、多くの国内企業が新規事業への参入や、市場シェアの拡大に向けて動き始めています。
そのため、今後も日本国内のM&Aは、件数・金額ともに伸びることが予想されます。
現代では多くの国内企業にとって、「M&Aが必須になる時代」と言われることがあります。では、なぜ今の日本にはM&Aが必要になるのでしょうか?
その理由のひとつは、人口の減少です。日本国内の総人口は、2010年頃にピークを迎え、その後減少傾向にあるとされています。人口減少については、高齢化・少子化が大きな要因となっていますが、この2つの問題が解消されない限りは、人口増加に転じることは難しいでしょう。しかし、さまざまな政策が実施されているものの、近年の日本では人口増加への兆しは見えず、今後も人口減少の問題に長期間悩まされるとされています。
そして、人口が減少しているということは、国内市場と内需が縮小することを意味します。国内企業にとってこれは死活問題であり、今後も状況が改善しないとなると、生き残りをかけて海外市場へ目を向けるしかありません。
日本はアジアの中では、比較的経済が豊かな国です。そのため、物価や地価などが高い傾向にありますが、国内企業にとっては「人件費の増加」が大きな問題になりつつあります。
一方、アセアン諸国などの新興国では、人件費を日本の10分の1程度に抑えられるケースも少なくありません。また、中国やインド、パキスタンなどは、日本より遙かに人口が多いため、労働者をスムーズに確保できる上に、市場を拡大しやすいといったメリットもあります。
上記で挙げた2つ以外に、「市場の特性の違い」も、M&Aをする大きな目的と言えるでしょう。すでに日本国内で主流となっている商品・サービスであっても、新興国では新規事業として参入できるケースも見られます。
このような国内の状況やM&Aのメリットを考えると、M&Aは大企業に限らず中小企業にとっても、生き残るための手段と言えるかもしれません。
日本が現在抱えている問題を踏まえると、M&Aは国内企業が生き残るための重要な手段と言えます。高いコストがかかったとしても、海外市場へスムーズに参入できるM&Aを利用することで、業績が大きく回復する可能性もあるでしょう。
また、特に新興国は今後も長期間経済成長する可能性があるので、企業の経営を安定させる手段として、新興国へのM&Aに注目が集まっています。
統計局ホームページ/日本の統計-第2章 人口・世帯-3 総人口の推移
http://www.stat.go.jp/data/nihon/g160302.htm
M&Aは日本企業の必修科目に ~「縮む」日本を超えて成長するために~ – Bain & Company
http://www.bain.com/offices/tokyo/ja/publications/articles/ma-is-necessary-subject-for-japanese-companies-tokyo.aspx
日本企業のためのインドM&A戦略 | M&A情報・データサイト MARR Online(マールオンライン)
https://www.marr.jp/genre/viewpoint/forum/entry/2433
日本企業を強くするM&A戦略: 明日から使える実践的ノウハウ – 菊地正俊 – Google ブックス
https://books.google.co.jp/books?id=xsj3AwAAQBAJ&pg=PA19&lpg=PA19&dq=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BC%81%E6%A5%AD+M%26A+%E5%BF%85%E8%A6%81&source=bl&ots=bFpPFiSFNS&sig=-Tsawx7qhDyXKZt6iU0nYZspVdE&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwjtycD22dnMAhULGpQKHciFCYoQ6AEITTAG#v=onepage&q=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BC%81%E6%A5%AD%20M%26A%20%E5%BF%85%E8%A6%81&f=false
日本と世界のM&A10年間を分析、新興国シフトが如実に – 日経BigData
http://business.nikkeibp.co.jp/article/bigdata/20140601/265907/
アセアン諸国(アジア新興国)のM&Aとバリュエーション(上) | コンサルティング | 大和総研グループ | 矢幡 静歌 | 内山 和紀
https://www.dir.co.jp/consulting/insight/ma/20130605_007276.html
電通が海外企業を買いまくっている理由 | ZUU online
https://zuuonline.com/archives/93512
日系企業の海外投資、なぜ今M&Aブームなのか―中国メディア – Record China
http://www.recordchina.co.jp/a119010.html
グラフで見るM&A | M&A情報・データサイト MARR Online(マールオンライン)
https://www.marr.jp/mainfo/graph/
海外M&Aの動向 | 経営者online
http://keieisha.zuuonline.com/archives/1697
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