公開日:2018/4/5 | 最終更新日:2018/4/6
これまで50を超える事業を開発・提供し、今年で15周年を迎えた株式会社ベーシック。積極的に事業譲渡・買収に取り組んでおり、数々のM&Aを成功させています。
今回は、株式会社ベーシックの代表取締役である秋山勝様に、M&Aに関するインタビューをさせて頂きました。
ーまずは自己紹介をお願いします。
株式会社ベーシックの代表取締役を務めております、秋山勝と申します。
私は高校卒業後、商社に入社して営業職として働いておりました。その後はITソリューション受託会社の物流センターや、一部上場企業での新規事業の立ち上げに関わっています。
これらの経験を経て、2004年に現在の会社を設立しました。
ーありがとうございました。では、次に会社の紹介をお願いします。
弊社では現在、大きく分けて4つの事業(Webマーケティング事業・メディア事業・海外事業・EC事業)を行ってきました。
Webマーケティング事業とメディア事業の2つは、事業者と消費者の最適なマッチングを目指した事業です。具体的には、マーケティングに関する知識不足やリソース不足を解消するために、Webマーケティングメディア「ferret(フェレット)」を通して、中小企業様を対象にノウハウなどをお伝えしています。
Webマーケティングにおける問題解決ができるメディア- ferret
3つ目の海外事業に関しては、日本の食文化を世界へ広げることが目的です。こちらもWeb上に「Japan Food Culture」を開設しており、多くの企業様が海外出店をするための支援をしています。
国内飲食店の海外進出をサポート - Japan Food Culture
最後にEC事業ですが、こちらでは小売業のECサイトの運営や、OEM事業(他社ブランドを製造する事業)に取り組んでいます。
-さまざまな事業に取り組んでいますが、株式会社ベーシックはどのようなきっかけで設立されたのでしょうか?
元々は私がお世話になっていた会社で、現在の事業を始めたいと考えておりました。しかし、その会社では諸事情により、新しい事業を始めることができませんでした。
その後は一旦案を引っ込めて業務にあたりましたが、考えれば考えるほど「チャンスがある」「世の中に貢献できる」と感じて、最終的に独立することを決めました。
ー御社は事業の一環として、M&Aを行っているのでしょうか?
弊社では、「WEBマーケティングの大衆化」を目標に掲げています。
多くの企業がWEBマーケティングを正しく理解して、自分たちをうまく表現できれば、適切なマッチングは自然に増えていきます。しかし、現状は知識不足・リソース不足が要因となり、ミスマッチングとなるケースも少なくありません。中小企業の多くは、WEBマーケティングを行うための「知識・環境・人」が不足しています。弊社はその点を解決するために事業を行っており、この事業のスピードを速めるためにM&Aを利用しています。
また、我々が身を置いているIT業界は、必要とされるサービスの変遷スピードが速い傾向にあります。そういった業界の中で、会社を次の成長につなげる戦略としてもM&Aは効果的であると考えています。
弊社は創業から今までの間に、50近くの事業を展開してきました。M&Aに関しては、エージェントを入れずに合計10件以上を成約しています。
ーエージェントを入れずにM&Aをされているということですが、全て自社のみで取り組んでいるのでしょうか?
はい。
M&Aをする際にエージェントを入れたほうが良いケースもありますが、弊社の場合はIT業界を通じた人との繋がりがあるので、売る場合も買う場合も相手方の企業戦略を細かく確認します。その上で、提案や交渉を行っています。
双方にとって「メリットがあるもの」についてピンポイントで提案し、交渉をしているので、ほぼ100%成約に至っています。
ー実際にM&Aを経験されて、どういった感想をお持ちでしょうか?M&Aのメリットなども教えてください。
M&Aをする最大のメリットは、「時間の有用性」だと思います。
例えば、売り手は自分たちで作り上げた事業を高く売却して、それを資金に新しい事業に投資をしていくことで、よりスピーディーに事業を展開できます。買い手についても、従業員ごと引き受けることができるので、事業展開のスピードを速められます。
しかし、会社ごとに企業文化は大きく異なるので、PMI(成約後の統合プロセス)は難しいポイントですね。
ーPMIをうまく進めるコツはあるのでしょうか?
企業文化を馴染ませるには、多くの時間が必要です。
相手方の企業文化を尊重する必要がありますし、無理に馴染ませようとすると反発が起こるでしょう。かと言って、極端に尊重するとM&Aの効果が得にくい側面もあります。
そこで弊社では、機能的な部分は相手方(売り手側)に任せて、その上に乗せる部分は自分たちで整えることを意識しています。また、相手方の会社に、チャレンジングな案件に取り組んでもらったこともあります。
-M&Aを行う場合に、どういった視点で検討されているのでしょうか?
弊社ではあくまでも戦略に基づき、その戦略に該当するかどうかでM&Aを検討しています。
例えば買い手になる際には、利回りが良いことだけを視点に選ぶわけではありません。戦略に該当する事業のみを選ぶことで、経験豊富な人材を確保するようにしています。戦略に関しては、1年~長くても3年以内で考えています。最終的には「その戦略に好影響を与えるM&Aなのか?」という視点から、必要かどうかを判断しています。
ー今までに行ったM&Aの事例を、差し支えがない範囲で教えてください。
今まで弊社が行っていたM&Aでは、事業を売却する際に完全に手放す形が中心でした。しかし、子会社である「Japan Food Culture」をFood’s Style株式会社様に事業譲渡するM&Aの際には、株式のシェアをすることで一部オーナーとして支援する形をとりました。
当時「Japan Food Culture」では、日本の飲食店が海外(主にアジア)に進出する際の支援をしており、Food’s Style株式会社様では、主にアメリカを中心に海外のビジネスオーナーに向けた情報提供のビジネスを行っていました。今後のビジョンが同じであり、相性の良い双方がそれぞれ事業拡大を図っていたので、M&Aによって「時間を短縮しながら事業価値を向上できるのではないか?」と判断し、事業譲渡を決めました。
ー「株式をシェアすることで一部オーナーに」ということですが、どちらがオーナーシップを持つかについてはどのように決められたのですか?
先ほど述べた「Webマーケティングの大衆化」は、国内で我々にしかできないことだと思っています。一方で海外事業に関しては、我々にも彼らにもできるのであれば、「同じ志を持った彼らに託そう」と意思決定をしました。その結果、Food’s Style株式会社様にオーナーシップを持ってもらうことになりました。
この事例では売却して利益を得ることが目的ではなく、実現(スピード)を速めることが目的でした。立ち位置を変えて、同じ夢を追える状態をスピーディーに作ることができたので、M&Aをして本当によかったと思っています。
ーありがとうございました。それでは最後に、今後のビジョンについて教えてください。
社会的な背景を考慮し、今後はメディア事業とマーケティング事業に主軸を置いていく中で、「SaaS」というビジネスモデルは必要不可欠であると考えています。SaaSは「Software as a Service」の略であり、ソフトウェアの機能をインターネット経由でユーザーに提供するサービスのことです。
我々が考えているマーケティング事業はSaaSにあり、サービスをクラウド上でご利用頂けるようにすることで、日本企業の生産性を上げることを目指しています。その中で、時代の変遷に応じてM&Aをしながら、ビジネスモデルを変えていきたいと考えています。